より 格助詞《接続》体言や体言に準ずる語に付く。 ①〔起点〕…から。…以来。出典更級日記 大納言殿の姫君「いづくより来つる猫ぞと見るに」[訳] どこからやってきた猫かと思って見ているうちに。②〔経由点〕…を通って。…を。出典源氏物語 玉鬘「前よりゆく水を初瀬川といふなりけり」[訳] (僧坊の)前を通って流れる水を初瀬川というのであった。③〔動作の手段・方法〕…で。出典徒然草 五二「徒歩(かち)よりまうでけり」[訳] (仁和寺の法師が)徒歩で(石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)に)参詣(さんけい)した。④〔比較の基準〕…より。出典更級日記 かどで「東路(あづまぢ)の道の果てよりも、なほ奥つ方に生ひ出でたる人」[訳] 東国へ行く道筋の最果て(=常陸(ひたち)の国)よりも、さらに奥まった所(=上総(かずさ)の国)で成長した人(である私)。⑤〔範囲を限定〕…以外。…より。▽多く下に「ほか」「のち」などを伴って。出典古今集 秋上「蜩(ひぐらし)の鳴く山里の夕暮れは風よりほかに訪(と)ふ人もなし」[訳] 蜩が鳴きしきる山里の夕暮れどきには、風よりほかに私の家を訪れてくれる人もない。⑥〔原因・理由〕…ために。…ので。…(に)よって。出典竹取物語 ふじの山「つはものどもあまた具して山へ登りけるよりなむ、その山をふじの山とは名付けける」[訳] 兵士たちを大勢つれて山へ登ったことによって、その山を(士(つはもの)に富む山の意で)富士の山と名付けたのである。⑦〔即時〕…やいなや。…するとすぐに。出典徒然草 七一「名を聞くより、やがて面影は推しはからるる心地するを」[訳] 名前を聞くやいなや、すぐに(その人の)顔つきは見当をつけられる気がするが。 参考(1)⑥⑦については、接続助詞とする説もある。(2)上代、「より」と類似の意味の格助詞に「よ」「ゆ」「ゆり」があったが、中古以降は用いられなくなり、「より」のみが残った。 語の歴史起点を表す語の変遷 |