ま 【間】 名詞① すきま。あいだ。出典源氏物語 野分「春の曙(あけぼの)の霞(かすみ)のまより、おもしろきかば桜の咲き乱れたるを見る心地す」[訳] 春の夜明けの霞の間から、みごとなかば桜が咲き乱れているのを見る心地がする。②柱と柱の間。出典源氏物語 空蟬「南の隅のまより、格子(かうし)叩(たた)きののしりて入(い)りぬ」[訳] 南側の隅の柱の間から、格子を音高くたたいてはいった。③部屋。出典枕草子 宮にはじめてまゐりたるころ「次のまに、長炭櫃(ながすびつ)にひまなく居たる人々」[訳] 次の部屋で、長い角火鉢のそばにすきまなく座っている女房たち。④うち。あいだ。▽連続している時間をさす。出典土佐日記 二・一「朝(あした)のま、雨降る」[訳] 朝のうち、雨が降る。 あはひ 【間】 名詞①(物と物との)あいだ。すきま。出典伊勢物語 七「伊勢(いせ)・尾張(をはり)のあはひの海づらを行くに」[訳] 伊勢の国(三重県)と尾張の国(愛知県の一部)のあいだの海岸を行く時に。②仲。間柄。出典源氏物語 宿木「いとよきあはひなればかたみにぞ思ひかはすらむ」[訳] (二人は)とてもよい仲なので、互いに思い合っていることであろう。③組み合わせ。つりあい。色の調和。出典源氏物語 浮舟「濃き衣(きぬ)に紅梅の織物など、あはひをかしく着替へて居給(たま)へり」[訳] (浮舟は)濃い紫の単衣(ひとえ)の上に紅梅襲(こうばいがさね)の織物など、つりあいも面白く着替えて座っていらっしゃる。④情勢。形勢。出典平家物語 一一・逆櫓「あはひ悪(あ)しければ、引くは常の習ひなり」[訳] 形勢が悪いので、引き上げるのが普通のやり方だ。 あひ 【間】 名詞あいだ。 あひだ 【間】 名詞①(空間的にみた)あいだ。すきま。隔たり。出典万葉集 二四四八「白玉のあひだ開けつつ貫(ぬ)ける緒(を)もくくり寄すればまた逢(あ)ふものを」[訳] 白玉と白玉とのあいだをあけて通したひもも、くくり寄せると、またくっつくのだから、私たちも遠く離れても、また会えるだろう。②(時間的にみた)あいだ。期間。うち。出典土佐日記 一・一一「かかるあひだに、みな、夜明けて、手洗ひ、例のことどもして、昼になりぬ」[訳] こうしているうちに、すっかり夜が明けて、手を洗い、いつものことなどをして、昼になった。③(時間的な)切れ目。絶え間。出典万葉集 三七八五「ほととぎすあひだしまし置け汝(な)が鳴けば吾(あ)が思(も)ふこころいたもすべなし」[訳] ほととぎすよ、しばらく切れ目をいれて(鳴いて)くれ。おまえが鳴くと、私の物思いに沈む心がどうしようもなくなるのだよ。④仲。間柄。出典今昔物語集 二九・五「貞盛(さだもり)は、この僧ともとよりいみじき得意にて、いみじく親しく語らひたりけるあひだなりければ」[訳] 貞盛は、この僧と以前からたいそう通じ合う関係で、とても親しく話し合っていた間柄であったので。⑤…ので。…だから。出典平家物語 二・西光被斬「昼は人目の繁う候ふあひだ、夜にまぎれて参って候ふ」[訳] 昼は人目が多うございますので、夜にまぎれて参上いたしました。 参考⑤は形式名詞化して接続助詞のように用い、原因・理由を表す。中古には、記録体の文章にしかみられなかったが、中世以降通常の和文にも使われるようになった。 -けん 【間】 接尾語①建物の柱と柱との間を数える語。出典源氏物語 夕霧「半蔀(はじとみ)四、五けんばかり上げ渡して」[訳] 半蔀を四、五間ばかりずっと上げて。②長さの単位。ふつう、一間は六尺(=約一・八メートル)。◆「間(ま)」の音読みから。 あいだ 【間】 ⇒あひだ あわい 【間】 ⇒あはひ あい 【合い・会い・逢い・相・間】 ⇒あひ |