こ・む 【込む・籠む】 >[一]自動詞 マ行四段活用活用{ま/み/む/む/め/め} ①ぎっしり詰まる。混雑する。出典紫式部日記 寛弘五・九・一一「人げ多くこみては、いとど御心地も苦しうおはしますらむとて」[訳] 人の気配が多く混雑しては、(中宮様も)ますますご気分が悪くていらっしゃるだろうというので。②複雑に入り組む。精巧に作られる。手間がかかる。出典子盗人 狂言「隅から隅までも手のこうだ能(よ)い普請ぢゃ」[訳] 隅から隅まで手がかかったよい家の造りだ。◇「こう」はウ音便。 >[二]他動詞 マ行四段活用活用{ま/み/む/む/め/め}詰め込む。押し込む。出典平家物語 三・公卿揃「あまりに人参り集(つど)ひて、たかんなをこみ、稲麻竹葦(たうまちくゐ)のごとし」[訳] あまりに人がたくさん参上し集まって、まるで竹の子を詰め込み、稲・麻・竹・葦が密生しているようだ。 >[三]他動詞 マ行下二段活用活用{め/め/む/むる/むれ/めよ}①中に入れる。とじこめる。出典源氏物語 若紫「雀(すずめ)の子を犬君(いぬき)が逃がしつる。伏籠(ふせご)のうちにこめたりつるものを」[訳] すずめの子を犬君(=童女の名)が逃がしてしまったの。伏籠の中にとじこめていたのになあ。②包み隠す。秘密にする。出典源氏物語 蛍「心にこめ難くて、言ひおき始めたるなり」[訳] 心に包み隠しておくのが難しくて、書きとめ始めたのである。 |