あと 【跡】 名詞① 足もと。足のあたり。足。出典万葉集 八九二「父母(ちちはは)は枕(まくら)のかたに妻子(めご)どもはあとのかたに囲(かく)みゐて」[訳] ⇒かぜまじり…。②足跡。出典徒然草 一三七「雪にはおり立ちてあとつけなど、よろづのものよそながら見ることなし」[訳] (田舎者は)雪の上には下りて立って足跡をつけるなど、すべてについてそれとなく見ることがない。③(去って行った)方向。行方。出典古今集 離別「雪のまにまにあとはたづねむ」[訳] 雪の中を行きながら(あなたの)行方を尋ねよう。④痕跡(こんせき)。形跡。出典奥の細道 平泉「夏草や兵(つはもの)どもが夢のあと―芭蕉」[訳] ⇒なつくさや…。⑤筆跡。出典源氏物語 橋姫「古めきたるかびくささながら、あとは消えず」[訳] (紙は)古めかしくかびくささがあるが、筆の跡は消えないでいて。⑥(定まった)形式。様式。先例。出典源氏物語 帚木「臨時のもてあそび物の、その物とあとも定まらぬは」[訳] その場限りの慰みもので、そのものはこうしたものだという様式も定まらないのは。⑦家のあとめ。家督。出典平家物語 一・鱸「清盛(きよもり)嫡男たるによって、そのあとをつぐ」[訳] 清盛は正式の長男であることによって、その(死んだ父忠盛の)家督を継ぐ。 |