まほし 助動詞 シク活用型《接続》活用語の未然形に付く。 ①〔自己の動作の実現の希望〕…たい。出典更級日記 物語「紫のゆかりを見て、続きの見まほしく覚ゆれど」[訳] 『源氏物語』の紫の上に関係するところを読んで、続きを読みたく思われるけれども。②〔事態の実現の希望〕…が望ましい。…てほしい。▽ラ変動詞「あり」などの下に付いて。出典徒然草 五二「少しのことにも、先達(せんだつ)はあらまほしきことなり」[訳] ちょっとしたことでも、指導者はあってほしいものである。⇒あらまほし(連語) 語法(1)「まほしく」の音便 連用形「まほしく」はウ音便化して「まほしう」となることがある。(2)「まほし」の対義語には「まうし」があり、「…たくない」という意味で用いられた。⇒まうし(助動詞)(3)未然形の「まほしく」 「まほしく+は」については、次の二とおりの説がある。[イ] の立場に立った場合にだけ、未然形が存在することになる。 注意「あらまほし」には連語の場合(②)と形容詞の場合とがある。⇒あらまほし 語の歴史上代にはもとの形「まくほし」が用いられ、「まほし」は中古以降の語である。和歌においてはその用例が少なかった。中古末には口語に「たし」が用いられるようになり、しだいに「まほし」の用例は減少し、「たし」にとってかわられた。⇒まくほし・たし |